洋服のリフォームやバックのリペアを依頼されて、料金が高いなぁ・・・と思われた事がありませんか?
しかし意外に知られていない、お直しの作業。
今回はお直しの作業工程を、わかりやすく解説してみたいと思います。
”お直し料金はなぜ、高額なんですか?”
オーダーメイドのような作業だから。
修理内容にもよりますが、お直しは一から洋服を作る作業よりも、手間や時間がかかります。
早速、総裏地交換の実例をあげて解説してみます。
依頼品は、メンズのジャケットの後ろ身頃の裏地が、裂けています。
この場合、どのように裂けているのか?
他の箇所にも、破れやほつれが無いか?
全体を確認していきます。
因みにこのジャケットは、アームホールの裏地部分の縫い目も、ほつれていました。
いまにも破れそうな状況です。
そこで、後ろ身頃の部分だけではなく、裏地の総取り換えを、お勧めしました。
また、裏地にはほとんど、ゆるみがない状態である事もわかりました。
ゆるみが無い事で、破れてしまった根本的な原因が、ここで解明できたのです。
この場合、原型と同じサイズで裏地を交換しても、また同じ状況になってしまうでしょう。
ゆるみが無いと、生地がつれて、着たときに綺麗なシルエットも出ません。
裏地の緩みを出して交換する事を、お客様にも説明します。
このように、原型よりも良い状態に改善できるのも、お直しをするメリットです。
縫製や素材などを見て、丈夫でキレイに仕上がる最善の方法を、考えます。
そして、お客様に少しでも長く着ていただけるよう、丁寧に取り組みます。
続いて、交換する裏地を買いに行きます。
今回は、原型に近い裏地のご要望でしたので、より近いものが見つかるまで、何件も廻り探しました。
状況によっては、裏地の色や柄をまったく違うスタイルに変えて、楽しむのも良いでしょう。
次は、縫われている糸がどんな素材で、色なのかを調べて探します。
すぐに見つからない場合は、取り寄せする事もあります。
材料がそろったら、いよいよお直しの作業がスタートです。
お直しの作業は?
まず初めに、ほどきの作業をしていきます。
洋服を作る工程にはない、お直しならではの手作業。
ほどきは、繊細な生地になればなるほど、破れないよう細かい縫い目に神経を使います。
一見、この地味なほどきの作業に、とても時間がかかります。
その後は、ほどいた裏地を伸ばし型紙を作ります。(原型よりゆるみを出す為、少し大きめに)
新しい裏地をカットし、ジャケットに裏地をピン打ちしていきます。
これらも全て、手作業で行います。
ミシン針を変え、糸調子を合わせます。
ミシンをかけていきます。
仕上がり後は、アイロンをかけます。
そして最後に検品します。
針や糸くずなどは残っていないか?
仕上がりはどうか?
マネキンに着せて、全体のシルエットなどもチェックします。
その後、お客様に着て頂き、問題が無ければお渡しする事ができます。
難しいお直しでは、丸3日間かかります。
お直しは一点ずつ、商品が異なり、修理内容も違います。
どんな商品でも対応できる、経験豊富な技術者でないと難しい仕事です。
数千万の毛皮などは、張りつめた緊張感の中で、作業しています。
譲り受けた大切な物や、思いの込められた一点物など、失敗が許されない仕事でもあるのです。
お直しは、ファッションのお医者さん?
ファッションのお直しは、病院のドクターに良く例えられます。
病院に来た患者さんを、診療して診断し、治療方法を考え処方箋を出したり、手術して快復できるようする。
今回のお直しの工程と、良く似ていると思いませんか?
バックやジュエリーなどのお直し(リフォームやリペア)も同様です。
一枚の服には
生地を作り染め、デザインして、縫製し検品した人。
その服をコーディネートしたり、スタイリングして販売する人。
そして愛用するお客様。
たくさんの工程があり、いろんな人の魂が込められています。
お直しをする職人さん達も、一生着られるよう思考を凝らし、気持ちを込めて作業しています。
このお直しの文化は、日本では歴史が古く、江戸時代に存在していたのをご存知ですか?
リュースしながら、サステイナブルに使い続けた江戸時代の人々。
物はなかったけれど、大切に使う心があり、現代よりも情緒のある贅沢な時間を過ごしていました。
※江戸時代のお直しに関しましては
をご覧ください
まとめ
お直しは一つひとつ、商品が異なり、時間と手間のかかるオーダーメイドのような奥深い作業。
地味な作業ですが単に直すだけでなく、着心地などを改善し、ブラッシュアップもしています。
リフォームやリペアしたり、時にはリメイクしたりして、ファッションをサステイナブルに楽しんでくださいね。
※サステイナブルに関しましては
をご覧ください